あけましておめでとう。
新年早々、僕宛てに一通の手紙が届けられた。
でも僕はそんなもの見たくもなかった。かなり前から、できれば来てほしくないと願っていたくらいだ。
でもそんな僕とは対照的に母は喜んでいる。
「やったわね、光栄な事よ」
何を言っているんだ。
ずっと思っていたことだが、我が親の言動で確信した。
この国はおかしい。僕は勇気を振り絞って答える。
「そんなものに従うつもりはない。僕は行かないよ」
すると、母がこう言う。
「何言ってるの?もう行ったじゃない」
母と家の景色が歪んで消えていくと同時に、
激しい痛みと鉄のにおいと共に、灰色の空を眺めている自分に気がついた。
ああ、そうだった。
助けを求める声も腕も、僕にはもう残っていなかった。
【意味怖】謹賀新年 の解説
これは走馬灯。戦地で敗れ、腕も失い声も出せないような状態で倒れているときに、
お正月に徴兵の赤紙が届けられたシーンを思い出しているよ。
戦争を正当化し、実の親までもが国のために戦死することを良しとする当時の風潮をおかしいと
思っていたこの人が、強制的に戦地に赴かされ命の瀬戸際に立っているのは悲しいね。。
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